けんてぃの家づくり:家の性能編
けんてぃの家づくり3回目は家の性能の話です。家の性能と言っても、間取りとか設備の話ではなく、断熱性、気密性について解説していきたいと思います。
断熱性
断熱という言葉はよく聞くので分かる人も多いと思いますが、ざっくり説明すると外の熱を家の中に伝わりにくくすることです。
この断熱性は、いわゆる断熱材によるものをよく謳われますが、実際にはサッシと窓も非常に大きなポイントなります。順に解説します。
断熱性の要:内断熱と外断熱
断熱には、壁の内側に断熱材を入れる内断熱、外側を覆う外断熱があります。
外断熱は気密性に優れるメリットがあり、結露の発生の抑制が期待できます。そのため、家の寿命を伸ばすこともできます。ただし、外側を覆うことになるため、外壁が厚くなるデメリットがあります。また複雑な形状や狭小地には向かないものとされています。
内断熱はコストが安く、どのようなデザインの家にも対応できるメリットがあります。しかし、どうしても隙間ができやすく、気密性が低くなってしまうデメリットや、使用する断熱材によっては劣化が早く家の寿命を縮めてしまう可能性もあります。
ちなみに両方を採用するダブル断熱という工法もあります。
内断熱の断熱材についてもう少し掘り下げると、発泡ウレタンやセルローズファイバー、グラスウールなど様々なものがありますが、ここにも落とし穴があります。
たまにグラスウールは施工が難しいけど、コストも安く抑えられるのでうちはやってます!と意気込む工務店がいます。実はこれかなり危険だったりします。
断熱材は隙間なく丁寧に施工する必要がある上、グラスウールは湿気に弱いため袋に入れた状態で敷き詰めることになります。この袋に入れた状態で敷き詰めるからこそ施工が難しいのですが、壁の中には筋交いやコンセントを差し込むための場所があったりするため、どれだけ丁寧に施工しても完全に敷き詰めることは非常に難易度が高いと言われています。
さらに施工時に袋が密封されておらず、湿気が入り込んで重くなり落ち込んでしまう、ということが発生します。
これに対して、発泡ウレタンやセルローズファイバーは現場で吹き付けるため、隙間なく敷き詰めることが比較的容易であり、劣化もそこまでしないそうです。
発泡ウレタンとセルローズファイバーは初期コストはかかりますが、後々のことを考えたらこちらを選んだ方が無難でしょう。
サッシ・窓
日本ではなぜかサッシや窓が軽視されていて、断熱材は高性能なのにサッシや窓は粗悪なものが使われている、というケースも非常に多いのが現状です。
しかし、窓は家の中で最も熱が逃げやすい場所の一つなので、きちんと熱損失の少ないサッシ、窓にしておく必要があります。(極論、窓をなくせば良いわけですが、そんなことをは現実的ではないですよね)
では、どういう物なら良いのかというと、地域にもよりますが、樹脂サッシと複層ガラス(Low-Eなど)であれば、かなり熱損失を防ぐことができます。
複層ガラスも、寒冷地ではトリプルガラスや真空ガラスが望ましいそうですが、それ以外の地域ではペアガラスであればよいかと思います。
断熱性能を表す指標
断熱性能を表す指標には、UA値とQ値と呼ばれる2つが使われていますが、近年はUA値が使われていることが多くなってきているため、ここではUA値の話をしていきます。
UA値とは外皮平均熱貫流率というもので、建物の内部から、床、外壁、屋根、開口部などから外に逃げる熱量を、外皮全体で平均した値です。すごく簡単に言うと、熱がどのくらい逃げやすいか、です。
この値は小さければ小さいほど高性能になります。
このUA値は、省エネ基準やZEH基準などで地域ごとに基準が設けられています。が、これらの基準も世界的にはかなり低レベルです。なのでこれらはアテにせず、HEAT20というより厳しい基準をクリアするようにしましょう。
ですが、実はまだ問題があります。
このUA値(Q値含む)は、あくまで机上で計算した理論値なのです。早い話、断熱材を超高性能にして、窓を極限まで減らせばそれだけ良い値が出ます。
さらに、実は意図的な開口部(窓や玄関など)以外の開口部(建築時にできた隙間)は、この値では考慮されていません。
なので、どれだけUA値が良い家でも、建築時にあちこちに隙間ができていたら、当然そこから熱が逃げたり入ってきたりしてしまい、まるで断熱性の低い家となってしまうのです。
なので、隙間なく気密の高い家にすることで、最大限に発揮するためにも高気密にすることがとても重要となってきます。
気密性能を見るC値
UA値では、隙間が考慮されていないため実際の断熱性能を表しているわけではない、ということが上記でご理解いただけたかと思います。
では、隙間も考慮した断熱性能を見ることはできないのでしょうか?そんなことはありません。ここで見るのがC値という値です。
C値は、相当隙間面積と呼ばれるもので、実際に建った家中の全ての隙間を集めて、どのくらいの隙間が空いているかを見るものです。
これは、断熱施工や気密工事が終わった段階で専用の機械を用いて実測します。
これによってその家の本当の気密性能がわかります。
そしてこのC値とUA値を見ることで、実際の断熱性能を見ることができるというわけです。
このC値もUA値と同じく低ければ低いほど高性能となります。
なぜかZEHなどの国の指標ではC値は撤廃されてしまいましたが、一般的に1.0以下であれば高性能な家と言われています。
ですが、最近はC値を意識するのであればハガキ半分以下の0.5以下は目指したいところです。
気密性が高いと空気循環が悪くなる?
たまに気密性を高くすると空気の流れができなくなり、空気循環が悪くなって空気が淀む、という話をされる方がいるようです。
しかし、実際にはその逆で、24時間換気システムによる計画換気の効果が上がり、常に新鮮な空気が家の中に入ってくるようになります。
これは、ストローで考えるとわかりやすいです。
穴の空いてないストローは吸えば容易く水が吸い上がってきます。しかし、穴の空いたストローはそこで水が漏れてしまうためなかなか吸い上がってきません。空気も同じです。
つまり、気密性が高ければ高いほど想定する場所から空気を取り入れ、想定する場所から空気を排出することができるのです。
それゆえに、気密性能は家にとってとても重要な指標となってくるのです。
ではその換気については……ちょっと長くなってしまったのでまた次回にします。
まとめ
- 断熱には内断熱と外断熱がある
- 内断熱の場合、グラスウールの場合は注意が必要
- 少し割高でも発泡ウレタンやセルローズファイバーがおすすめ
- UA値はHEAT20の指標をクリアすることを目指そう
- 実測のC値を重要視しよう
いかがだったでしょうか。
C値やUA値といった断熱性能や気密性能は空調などのランニングコストにも大きな影響を及ぼすものでもあるので、ぜひ意識して欲しいポイントです。
次回は今回書ききれなかった換気についてまとめようと思います。
最後までありがとうございました。